神の子誕に行ってきた話

先日、神永圭佑くんのお誕生日公演を観てきました。
公演中の誕生日、しかも全国立海、更に二十歳ときたこの記念すべき日、行かいでかと早々にチケットを確保していたはいいものの突如としてぶっこまれた六本木デスマーチ*1のせいで有給と社会的信用を豪快に切り崩した私は直前まで行くのを躊躇っていた。というかもう90%行かない腹でいた。(更に先日の和歌山遠征の失態もあり)(その節は本当にすいませんでした)
けれど本人が公演中の誕生日を大いに楽しみにしていることや、他に誕生日を迎えたキャラ及び役者さんの祭り上げられっぷりをみて辛抱溜まらず、かの名言『博多は遠くても行けるけど、過去には決して行けないんだよ!』*2を思い出し勢いで行ってきたよ大阪。ところで軽率上京の関西版は何て言えばいいんだろう。軽率上洛?とにかく行ってきました。

 

場所は例のメルパレスことメルパルク。会場ロビーに入った瞬間「アッこれバクステでよくストレッチとかしてるあそこじゃん!章平氏がほとんど筋肉とか言われてたとこじゃんウワー!」と俄然テンションがあがる。四方八方から再生される幸村くんの日替わりボイス(内容は、僕と似た人が今日は誕生日のようだね…今日は彼と一緒に最高の試合をするよ。みたいな感じだったと思う)に気が狂いそうになりながら開演を待った。

終わってみて、行ってよかったな~というのが率直な感想です。キャラじゃなくて役者さんの誕生日だから、どういう風にフィーチャーされるのかなと思ってたけど、アンコールと後アナできっちり盛り上げてくれました。アンコールの神の子ー!は本当に可愛かった…。神の子コールがみれただけでも大阪に来た甲斐はあったと思っていたけれど、後アナで小笠原氏の「そして!今日は神永圭佑の誕生日だ!」で一気に客席がワッてなったので、やっぱりその為に来てる人大勢いるよねみんなお祝いしたいよねうんうんってその為に来た私は強く強く思ったよ。その後アップされた神永くんのブログでも、自分の誕生日だから来てくれた人がいるということに触れてくれていたので、そういうの自覚してくれているんだなあとありがたく思いました。

公演中、今日は神永くんの為に来たんだから潔く幸村くん定点カメラをしよう、と決めていて、本当にずっと幸村くんだけを追ってたら何か改めて幸村くんや全国立海について色々考えさせられてしまってですね。
しみじみ幸村くん好きだわ、神永くんの幸村好きだわ、という気持ちになりました。

私は2ndシーズン…もっと言えばテニミュそのものに初めて行ったのが全国氷帝公演だったので、それまで2ndシーズンの幸村は神永くんという役者がやっている、という知識はあったものの、体感は得られていなかったんですね。映画祭なんか行ったりしても、へーっこんな感じなのか~みたいなテンションで終わっていた。それが、なんか割とはっきり、普通に恋するような気持ちで夢中になってる(なってるんですよねーこれが)のって、思い返しせばやっぱ運動会が大きかったな~って思うんですよ…。関東立海ドリライなど映像では見ていたものの、実際に動いて、喋って、目の前に存在している姿を見たのは運動会が初めてだった。もう今までに散々つっこまれたと思うけどテニスの王子様が完全にテニスしてない空間にもかかわらず、運動会の幸村くんに私は夢中になった。運動会の幸村くんは、勝負の時は全力だしガチだし負けず嫌い発揮するんだけど、そうじゃない時はとても悠然としていて、部員の応援もするし、ベンチでにこにこ笑ってる。作者本人をして「コートの外では穏やかな人」と言わしめる佇まいがそこにはありました。あれを見たことで、『幸村精市(演:神永圭祐)』をしっかり認識するようになったし、実際に公演を観た今ははっきりと『神永くんの幸村が好きだー』て言える。
やっぱり生で観て感じることって本当に強烈なんだなーと思う。アリーナ前方で観たときも感じたけど、肉眼で見る景色がこの世で一番美しい。そして日常の中に隠れた、そういう美しい景色に繋がる扉を知ってることは本当に幸せなことだと思うのだ。

今回、幸村くんをずーっと見ていて、そして試合の後立海ベンチに佇む姿を眺めながらなんとなく抱いた感想として、「神の子は人になった」というものがあった。自分でも不思議だったのだけど、その思いはふっと確信めいたものとして私の胸に宿り、この2nd全国立海のけして本筋では描かれない文脈として、私の中に組み込まれることとなった。

「神の子が人になった」というと、負けて堕ちたみたいな言い方だけどそうではなく、私の中ではすごく肯定的なニュアンスだということを先に言っておこうと思います。「天才」「キング」「皇帝」「詐欺師」「聖書」「悪魔」(今列挙して立海濃いなって思った)など、テニプリの世界にはそういう呼称をもったキャラが多く存在する。まずスタート地点が「王子様」というハードルの高さなので、物語が進むにつれそのピラミッドの先端がより高くなっていく中で、最後に降臨したのが「神の子」である。この途方もない肩書き、最初こそ草も生えたけどこの「神の子・幸村」という響きはとてもしっくりきていて、すごく好きである。神じゃなくて神の「子」なのがミソね。

幸村くんが神の子と呼ばれるなら、その神とは一体誰/何なのか?ということを考えた時、やはりテニスだろうなと思った。
でも神の子って、神様に助けては貰えないんだよね。神の子は、「神よ、何故私を見捨てるのです。何故私を助けて下さらないのです」と叫び苦しみながら磔刑に処されてしまうから。S1、絶対優勢と思われた試合の中で、五感を奪われても食らいつくリョーマに翻弄され、「まさか…まずい…」からの苦悩と慟哭、そしてリョーマが天衣無縫の極みに至ってからの表情を見ていると、観ているこちらが十字架の道行きに等しいほどの苦しみを覚えるのである。
リョーマが天衣無縫状態になってからはずっと「何故?」って言う顔してるんだもん。何故五感を取り戻した?何故まだテニスを続けられる?何故勝てない?何故負ける?って。テニスを楽しめなくなっても、手術の痛みに耐えてもここに戻ってきたのに、どうして。だって今まで負けたことのない人ですよ。テニスを楽しむだなんて、考えられない人ですよ。
それがこんな大一番で、自分は必死に追いすがってるのに相手は笑顔だし、喜びに満ち溢れて、どんどんポイント取られて追い詰められて…。見てられるかそんなもん!見たけど!見るけど!最後まで!!!

全国立海が描き出す物、テニスの王子様という物語が最後に至った境地、それが天衣無縫。
試合の中でリョーマは一度死に、テニスをする喜びを思い出したことで蘇った。
また1stでは「これは生きるか死ぬかの真剣勝負 常勝すること それが掟 勝つこと 勝つこと 勝つこと」と歌い、2ndでは「これは命を懸けた闘い 試合は勝利のためだけにある儀式 勝って勝ち続けて また勝って その結果のみが俺の生きる証」と歌っている幸村精市にとっても、この試合で負けることは死を意味することにほかならないのです。
テニスの為に生きても、テニスの定める運命に抗えず死んでいく。その姿はまさしく神の子。そしてこの記憶喪失→五感剥奪→からの天衣無縫が描き出す物はどう控えめに解釈しても生と死と復活。なんて壮大な物語なんだ。そりゃあテニスは宗教にもなるっちゅー話や。あのS1の試合、とてもとても辛いけど、あの瞬間、幸村くんも確かに生きていた。神の子という呼称を捨てて、必死にボールを追い、勝利を渇望する人の姿をして生きていた。そして絶望と、敗北という死を経験して、彼もいつの日か必ず蘇る。その復活の日を、来るべき福音を思うと胸が熱い。いつだったか曖昧なんだけど、S1試合終了後、皆がベンチの影にひっそり佇む幸村から目を逸らしている中で、赤也だけがずっと幸村から目線を外さずにいた日があって、それを見ていたらなんだか「ああ~~~~~;;;赤也が見てるよお~~~;;;幸村ぐんを見てるよぉ~~~~TTTT」とよくわからないがかなりこみ上げるものがあったのだった。赤也頑張れ。立海頑張れ…!!

とまあごちゃごちゃとそんなことを考えておりました。

ここまでこんだけ勝利が生で敗北は死で復活の日がうんたらかんたらと述べたけど、幸村くんにはテニスだけじゃなくて色んな道が開けてると思ってるから。神童も20過ぎたらただの人と、言いますが。20過ぎて幸村くんも、憑きものが落ちたようにああ、テニスに夢中になってた日々もあったねと、言ったりするのでしょうか。わからないけれど。幸村くんだけじゃなくて、テニスの子達は、いつかテニスから離れる時が来ても自分の好きなことやって健やかに暮らして欲しい。他の誰よりも幸村くんにそれを願ってる私です。
そしていつの日か思い出したように、「テニスしよう」って言ったら集まれる仲間がいてくれたらいいな…と思う。そのときは幸村くんも、楽しむためのテニスができたらいいなと思う。それは幸村くんを演じてくれた神永くんにも同じように思っている。テニミュが終わっても、仲間に囲まれて、自分の思う道を歩いて行けたらいい。

長くなっただけで一向にまとまる気配を見せませんが、改めて神永くん20歳おめでとうございました。

20回目の誕生日は、初めてこの世に生まれてきた日と同じくらい祝福されるし、自分よりも周りの人に取って意味のあるものだったりするよね。そういう意味でも、再び生を受けたんだな、という気持ちで感慨深かった。神永くんも、幸村くんも。
そして小越さんという、もう一人の20歳の天衣無縫同士が切磋琢磨してこの舞台を作ってるんだなと思って。私にとっても、とても意味のある日になりました。私の大好きなひとのことを、一生懸命考えて、一生懸命演じてくれてありがとう。
神永くんのこれからが明るく輝いていますように。

*1:テレビ朝日六本木ヒルズ夏祭りSUMMER STATION

*2:最早説明不要の聖書、zucca×zuca第364場より